GIGAスクール構想は第2期を迎え、全国で一人一台端末の更新が進められています。
第2期では、より高度なICT活用に対応できる性能が求められており、国からは一台あたり5.5万円の補助金も用意されています。
端末の主な選択肢は「Chromebook」「Windows PC」「iPad」の3種類です。それぞれ特徴が異なるため、教育目標や環境に合わせた選定が重要となります。
本記事では、第2期の端末選びで押さえるべきポイントを解説し、各OSの代表的な推奨モデルを具体的にご紹介します。 端末選定の参考にしてください。
GIGAスクール構想
GIGAスクール構想は、児童生徒一人ひとりに個別最適化された学びを提供するため、一人一台端末と高速大容量の通信ネットワークを整備する国の重要な取り組みです。
2019年の開始以来、第1期を経て全国の小中学校に端末が行き渡りました。現在は第2期を迎え、第1期で導入された端末の計画的な更新が進められています。
第2期では、単に端末を新しくするだけでなく、第1期で明らかになった故障やバッテリーの寿命といった課題に対応しつつ、ICT活用をさらに高度化させることが目標です。
具体的には、動画編集やプログラミング、AI活用といったより負荷の高い処理や、複数のアプリケーションを同時に利用するマルチタスクへの対応、オンラインと対面授業を組み合わせたハイブリッド型学習への対応などが期待されています。
国はこの端末更新を財政面から支援するため、一台あたり5.5万円(第1期は4.5万円から増額)の補助金を交付します。
この補助金には、故障や修理中の代替機として「学びを止めない」ために不可欠な予備機(全体の15%以内)の整備費用も含まれています。また、端末活用を支える基盤として、2025年度までに全ての学校で必要十分なネットワーク速度を確保することも目指しています。

GIGAスクール第2期の端末に求められるスペック
文部科学省は、第2期で導入する端末の推奨仕様を公開しています。
教育現場で主に利用されるChromebook、Windows PC、iPadの3種類について、それぞれ満たすべき最低限のスペックが定められています。
- CPU性能: WindowsとChromebookでは、Intel Celeron N4500プロセッサーと同等以上の性能が求められます。
- メモリ: Windows端末では8GB以上が推奨されます(Webブラウザ中心なら4GBも可)。Chromebookでは4GB以上が最低要件です。
- ストレージ: WindowsとiPadは64GB以上、Chromebookは32GB以上が必要です。
OSの種類に関わらず、全ての端末に共通して求められる主な仕様は以下の通りです。
- 画面: 10インチから14インチのタッチパネルディスプレイ
- 無線LAN: Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)以上に対応
- カメラ: インカメラとアウトカメラの両方
- 接続端子: マイク・ヘッドフォン端子、USB Type-Cポート(Power Deliveryによる充電対応)
- バッテリー: 8時間以上の駆動時間
- 管理機能: MDM(モバイルデバイス管理)による遠隔での設定・制御機能
加えて、Windows PCとChromebookには物理キーボードとタッチペンの付属が、iPadには利用時に端末を立てかけられるスタンドの用意が求められています(iPadのキーボードは必須ではないものの、入力スキル育成の観点から推奨されています)。
第1期と比較すると、特にWindows端末の推奨メモリ容量が4GBから8GBへと引き上げられた点が大きな変更点です。
これは、複数のアプリケーションを同時に利用したり、より高度なソフトウェアを使ったりする場面が増えることを見据えたもので、端末選択における性能重視の傾向を示唆しています。
また、より高速な通信規格であるWi-Fi 6の推奨は、クラウドサービスの活用やオンライン学習コンテンツの利用拡大に対応するためです。
全ての端末でタッチパネルが必須となったことは、直感的な操作やデジタルペンを活用した多様な学習活動の重要性が高まっていることを示しています。
それでは各OSごとにおすすめの端末を紹介していきます。
WindowsOS端末
Microsoft Surface Go 3
0.5インチのタッチスクリーンで、軽量かつ持ち運びやすい。別売りのタイプカバーとSurfaceペンを使えば、ノートPCとしてもタブレットとしても活用可能。
項目 | スペック |
CPU | 第10世代インテル Core i3-10100Y プロセッサーnews.microsoft.com |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD |
本体寸法 | 245×175×8.3 mm |
画面サイズ | 10.5インチ (PixelSenseタッチディスプレイ) |
ASUS E210KA-GJ02WWS
11.6インチのコンパクトなノートPC。ポップなデザインで、タッチパッドがテンキーになる独自機能を搭載。Officeアプリも付属しており、学習用途に適している。
項目 | スペック |
CPU | インテル Celeron N4500 プロセッサーasus-event.com |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB eMMC |
本体寸法 | 279.1×191.2×16.9 mm |
画面サイズ | 11.6インチ (1366×768ドット WXGA) |
mouse A4
14インチのフルHDディスプレイを搭載し、国内生産の高品質ノートPC。約9時間のバッテリー駆動で、持ち運びにも便利。
項目 | スペック |
CPU | AMD Ryzen 5 7430U プロセッサーmouse-jp.co.jp |
メモリ | 16GB(8GB×2 デュアルチャネル) |
ストレージ | 256GB SSD (NVMe) |
本体寸法 | 325×218×21.8 mm |
画面サイズ | 14インチ (フルHD 1920×1080) |
NEC LAVIE N1475/CAL
14インチの大画面で、Intel Core i3を搭載。オンライン学習や本格的なプログラミングにも対応できるスペックを持つ。
項目 | スペック |
CPU | 第11世代インテル Core i7-1165G7 プロセッサーnec-lavie.jp |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 512GB SSD |
本体寸法 | 327×225.7×19.2 mm |
画面サイズ | 14.0インチ (フルHD IPS液晶) |
HP Pro x360 Fortis G11 Notebook PC
コンバーチブル型で、タッチペンを標準搭載。高い堅牢性と使いやすさを追求した教育向けモデル。
項目 | スペック |
CPU | インテル プロセッサー N100 |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 128GB UFS |
本体寸法 | 297×203.7×21.2 mm |
画面サイズ | 11.6インチ (タッチ対応、1366×768ドット) |
ChromeOS端末
HP Fortis Flip G1m 11 Chromebook
質量約1.19kgの軽量コンバーチブルモデル。キーボード上に格納可能なタッチペンを標準搭載。
項目 | スペック |
CPU | MediaTek Kompanio 520 プロセッサーjp.ext.hp.com |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
本体寸法 | 約293×202×21 mm |
画面サイズ | 11.6インチ (タッチ対応、1366×768ドット) |
NEC Chromebook Y4
360度回転するディスプレイを備え、タブレットとしても使用可能。堅牢性や耐久性を強化したモデル。
項目 | スペック |
CPU | インテル プロセッサー N100 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 32GB eMMC |
本体寸法 | 289.9×210×19.9 mm |
画面サイズ | 11.6インチ (タッチ対応、1366×768ドット IPS液晶) |
Acer Chromebook Spin 511
コンバーチブルタイプで、タッチペンを標準搭載。教育現場での使用を想定した堅牢設計。
項目 | スペック |
CPU | インテル Celeron N4500 プロセッサー |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 32GB eMMC |
本体寸法 | 約296×206×21.1 mm |
画面サイズ | 11.6インチ (タッチ対応、1366×768ドット IPS液晶) |
Dynabook Chromebook C70
10.1型液晶を搭載し、タブレット本体を取り外せる2in1デタッチャブルタイプ。教育現場での使いやすさを追求。
項目 | スペック |
CPU | MediaTek Kompanio 520 プロセッサーdynabook.com |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 64GB eMMC(フラッシュメモリ) |
本体寸法 | 約248.0×185.0×20.45 mm(キーボード接続時) |
画面サイズ | 10.1インチ (タッチ対応、1280×800ドット WXGA) |
Lenovo 300w Yoga Gen 4
360度回転する11.6型ディスプレイを搭載し、タブレットモードやテントモードなど多様な使い方が可能。
項目 | スペック |
CPU | インテル プロセッサー N100 |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 128GB UFS |
本体寸法 | 約287×200×19.8 mmlenovojp.com |
画面サイズ | 11.6インチ (タッチ対応、1366×768ドット IPS液晶) |

iPadOS端末
iPad (第10世代)
10.9インチのLiquid Retinaディスプレイを搭載し、A14 Bionicチップで高性能。Apple PencilやSmart Keyboardに対応し、多様な学習スタイルに適応。
項目 | スペック |
CPU | Apple A14 Bionicチップsupport.apple.com |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 256GB |
本体寸法 | 248.6×179.5×7.0 mm |
画面サイズ | 10.9インチ Liquid Retinaディスプレイ |
iPad Air (第5世代)
M1チップを搭載し、10.9インチのLiquid Retinaディスプレイを備える。軽量で持ち運びやすく、高性能なアプリケーションも快適に動作。
項目 | スペック |
CPU | Apple M1チップsupport.apple.com |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB |
本体寸法 | 247.6×178.5×6.1 mm |
画面サイズ | 10.9インチ Liquid Retinaディスプレイ |
iPad Pro 11インチ (第4世代)
M2チップを搭載し、ProMotionテクノロジーによる滑らかな表示が特徴。高度なクリエイティブ作業にも対応可能。
項目 | スペック |
CPU | Apple M2チップsupport.apple.com |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 2TB |
本体寸法 | 247.6×178.5×5.9 mm |
画面サイズ | 11インチ Liquid Retinaディスプレイ |


GIGAスクール端末を導入する際の推奨例と注意点
各自治体や学校がそれぞれの教育方針や実情に合わせて、最適な端末を検討していくことが必要です。
学校種別によっても、適した端末の傾向は異なります。
一般的に、小学校、特に低学年では、iPadの直感的な操作性や豊富な知育アプリ、あるいはChromebookの高い堅牢性が有効と考えられます。
中学校や高等学校では、レポート作成やプレゼンテーション、専門的なソフトウェアの利用など、より高度な学習活動が増えるため、汎用性の高いWindows PCも有力な選択肢となります。
特定の教科や特別活動(例:プログラミング、デザイン、音楽制作など)では、目的に特化した端末を選ぶ、あるいは複数の種類の端末を併用することも効果的でしょう。
具体的なモデルを選定する際には、Lenovo 300w/500w Yoga Gen4、Acer Chromebook Spinシリーズ、HP Pro x360 Fortisシリーズ、富士通 LIFEBOOK Uシリーズなど、各メーカーからGIGAスクール向けに提供されている推奨モデルを参考に、性能、機能、耐久性、そしてコストのバランスを慎重に比較検討することが重要です。
本格的な導入の前には、一部の学年やクラスで試験的に導入(パイロットプログラム)し、児童生徒や教員からのフィードバックを収集・分析することをお勧めします。
また、選定した端末の性能を最大限に引き出すためには、校内のWi-Fi環境が十分な速度と安定性を備えているかを確認し、必要であれば増強することも不可欠です。
さらに、教員が新しい端末やソフトウェアを効果的に授業で活用できるよう、十分な研修機会と継続的なサポート体制を提供することも忘れてはなりません。
特別な支援が必要な児童生徒に対応するためのアクセシビリティ機能についても、選定段階で確認しておくべき重要な要素です。
まとめ
GIGAスクール構想第2期における一人一台端末の選定は、単なる機器の更新ではなく、これからの日本のデジタル教育の質を方向づける重要な意思決定です。
Chromebook、Windows PC、iPadは、それぞれに優れた点と考慮すべき点を持っています。
本稿で解説した各端末の特徴、推奨される仕様、選定における考慮事項などを参考に、各教育機関が自らの教育目標、児童生徒の実態、予算、運用体制などを総合的に勘案し、最適な端末を選択することが求められます。
適切な端末が導入され、それが効果的に活用されることで、児童生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、日本の教育全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させることが期待されます。