GIGAスクール構想の推進以降、多くの教育現場でiPadが導入され、児童・生徒の学習活動に不可欠なツールとなっています。
一方で、多様なモデルが存在するため、どのiPadが自校の教育活動や予算に最適なのか、選定に悩まれる先生方やご担当者様も少なくないかと存じます。
本記事では、学校におけるiPad導入・更新をご検討中の教職員、学校関係者の皆様に向けて、現在のラインナップからおすすめのモデルと、教育現場の実情に即した選定ポイントを解説いたします。
最適なデバイス選びの一助となれば幸いです。
学校導入におすすめのiPadモデル
現在(2025年4月時点)のiPadラインナップの中から、学校での利用に適した主なモデルとその特徴を、それぞれ表形式でご紹介します。

iPad(第10世代):コストと性能のバランスに優れた標準モデル
項目 | 詳細 |
特徴 | 教育活動に必要な基本性能を備え、価格も手頃。大規模導入に適したコストパフォーマンス。10.9インチ画面はデジタル教科書やノート利用に十分。 |
主な用途 | 調べ学習、資料閲覧、ノートテイキング、基本的なアプリ利用など。 |
対応アクセサリー | Apple Pencil(USB-Cまたは第1世代 ※アダプタ要)、Smart Keyboard Folio など。 |
推奨ポイント | 予算重視で標準的な学習活動に対応したい場合に最適。多くの児童・生徒に十分な性能。 |
iPad Air:より高度な学習活動や制作活動に対応

項目 | 詳細 |
特徴 | 高性能チップ搭載で動作が軽快。Apple Pencil(第2世代)対応で利便性向上(マグネット装着でペアリング・充電)。 |
主な用途 | イラスト制作、動画編集、音楽制作、プログラミングなど、より負荷の高いアプリやクリエイティブな活動。 |
対応アクセサリー | Apple Pencil(第2世代)、Magic Keyboard など。 |
推奨ポイント | 専門教科での活用、高度な表現活動、快適な操作性を求める場合に適。中学校・高等学校での導入にも有力。 |
iPad mini:携帯性に優れ、特定用途で活躍
項目 | 詳細 |
特徴 | 小型・軽量で持ち運びに優れる。 |
主な用途 | 校外学習(フィールドワーク)、特別支援教育での活用、教員の校内モバイル端末など、携帯性が重視される場面。 |
対応アクセサリー | Apple Pencil(第2世代)など。 |
推奨ポイント | 携帯性・取り回しが最優先される場合に有効。ただし画面が小さいためメイン端末としては用途が限定的。 |
iPad Pro:専門分野での活用を想定したハイエンドモデル

項目 | 詳細 |
特徴 | 最高レベルの性能を持つが、価格も最も高価。 |
主な用途 | デザイン、映像制作、建築、医療など、専門分野での高度な活用。 |
対応アクセサリー | Apple Pencil(第2世代)、Magic Keyboard など。 |
推奨ポイント | 一般的な学校教育活動にはオーバースペックな場合が多いが、専門学科や特定の研究活動で高性能が必要な場合に検討。 |


学校用iPadの選定ポイント
次に、学校用としてiPadを選定する際に考慮すべき重要なポイントを解説します。
1. 予算と費用対効果
まず、予算計画においては、iPad本体の価格だけでなく、関連費用も考慮に入れる必要があります。
本体価格はモデル、ストレージ容量、Wi-FiかCellularかの違いによって変動するため、導入規模に応じた検討が不可欠です。
さらに、Apple Pencilやキーボードといったアクセサリー費用、そして特に学校環境では必須となる耐久性の高い保護ケースの費用も予算に含めるべきです。
最終的には、これらの初期導入費用に加えて、保守、管理、将来的な更新費用まで含めた総所有コスト(TCO)という長期的な視点でのコスト評価が求められます。
2. 主な利用目的と教育効果
iPadを選定する上で、どのような教育活動に活用するのかを具体的に想定することが重要です。
例えば、低学年での基本的な操作練習から、高学年での調べ学習やレポート作成、さらには専門教科での応用まで、児童・生徒の発達段階や教科の特性に合わせて最適なモデルを選ぶ必要があります。
また、教室での一斉学習、グループワーク、個別学習、校外学習といった様々な活用場面を考慮し、それぞれのシーンに適した性能、画面サイズ、携帯性を持つモデルを選定することが求められます。
最終的には、「何を達成するためにiPadを導入するのか」という導入目的を明確にし、その目的達成に合致したスペックと機能を持つデバイスを選定することが、教育効果を最大化する鍵となります。
3. ストレージ容量
ストレージ容量の選定も重要なポイントです。OSや標準アプリの容量に加え、学校で利用する教育用アプリ、教材データ、そして児童・生徒が作成・保存するファイル(動画、作品など)を考慮し、十分な容量を見積もる必要があります。
一般的に64GBでは容量不足に陥るリスクがあり、特に複数年度にわたって使用する場合や、多様なアプリ、データを活用する場合には、128GBまたは256GBを選択することが推奨されます。
クラウドストレージの活用も有効な手段ですが、オフラインでの利用やアプリ本体の保存に必要なローカルストレージ容量も考慮に入れるべきでしょう。
4. ネットワーク接続(Wi-Fi / Cellular)
ネットワーク接続方式の選択は、学校のインフラと運用方針に依存します。
校内にWi-Fi環境が安定して整備されている場合、通常はコストを抑えられるWi-Fiモデルで十分対応可能です。
一方で、校外学習での利用頻度が高い場合や、家庭にWi-Fi環境がない児童・生徒への貸与を想定する場合には、Wi-Fi + Cellularモデルが検討されます。
ただし、Cellularモデルは本体価格が上昇し、別途通信契約と月額料金が必要になる点に留意し、慎重に判断する必要があります。
5. アクセサリーの選定と標準化
iPad本体だけでなく、学習効果を高めるアクセサリーの選定も重要です。
手書き入力によって思考を深め、表現力を高めるApple Pencilや、レポート作成・プログラミング等で文字入力効率を上げるキーボードは、必要に応じて導入を検討すべきでしょう。
特に、学校環境での破損リスクを低減し、長期的な利用を可能にするためには、耐衝撃性に優れた保護ケースの選定は極めて重要です。
また、導入するアクセサリーの機種を統一することは、管理や保守の観点からもメリットがあります。
6. 管理・運用と将来性
導入後の管理・運用体制と、デバイスの将来性も選定の重要な要素です。
特に大量導入の場合、MDM(モバイルデバイス管理)システムを活用することで、効率的な初期設定、アプリ配布、セキュリティ管理が可能となり、その互換性は考慮すべき点です。
また、新しいモデルほどOSアップデートのサポート期間が長い傾向にあるため、長期的な利用を見据え、デバイスのライフサイクルを考慮した選定が望まれます。
さらに、故障時の修理やサポート体制についても、事前に確認しておくことが重要です。

まとめ
学校におけるiPadの選定は、単にスペックや価格を比較するだけでなく、教育目標、利用実態、予算、そして管理・運用面まで含めた総合的な判断が求められます。
- 標準的な利用には「iPad(第10世代)」がコストと性能のバランスに優れます。
- より高度な活用には「iPad Air」が適しています。
- 携帯性重視なら「iPad mini」、専門分野には「iPad Pro」という選択肢があります。
- 選定時には「予算」「用途」「ストレージ」「ネットワーク」「アクセサリー」「管理・将来性」といった多角的な視点を持つことが重要です。
各学校の状況に合わせて最適なiPadを選定し、効果的に活用することで、児童・生徒の学びを一層深化させることが可能になります。
本記事が、そのための検討材料としてお役に立てれば幸いです。