世田谷区のGIGAスクールが、教育関係者の間で注目を集めています。
iPadの採用、そして「制限少なめ」という独自の運用方針。
これらは単なる技術的選択ではなく、「ICTを管理の道具ではなく、学びの道具として捉える」という明確な教育哲学に基づいています。
駒繋小学校をはじめとする先進校では、子どもたちの主体的な学びが着実に成果を上げている一方、保護者からは家庭学習における不安の声も聞こえてきます。
本記事では、端末更新の最新動向から教育委員会の意図まで、世田谷区GIGAスクールの全体像を整理していきます。
世田谷区のGIGAスクール構想
GIGAスクール端末の選定では、ChromebookやWindows端末も候補に挙がりました。
その中で世田谷区がiPadが選ばれた背景には、「操作性」と「創造性」を重視する姿勢があります。
iPadは直感的な操作が可能で、子どもたちがすぐに使いこなせます。
加えて、動画制作や音楽制作といった創造的な活動にも強い。
教育委員会は、単なる情報端末としてではなく、協働的な学びを支えるクリエイティブツールとしてiPadを評価し、採用を決定しました。
第1期(初期)導入の基本情報と端末管理体制
第1期導入では、iPad第7世代が全児童・生徒に配布されました。
端末管理の方針として掲げられたのは「必要最低限の制限」。
制限を厳しくしすぎると、子どもたちの主体的なICT活用が阻害されてしまう。
そうした考えから、管理ツールにはモビコネクト(MDM)を、フィルタリングにはCisco Umbrellaを採用。
安全性を確保しながらも、学習の自由度を保つバランスを追求しています。
世田谷区の独自性
23区内でも、端末の制限方針は自治体によって大きく異なります。
練馬区や品川区では夜間の利用制限を設け、渋谷区では学習サイトへのアクセスに限定するなど、比較的厳格な運用が目立ちます。
これに対し世田谷区は、「制限をかけすぎない」方針を貫いています。
制限で縛るのではなく、子どもたち自身の自己管理能力を育てる姿勢が、世田谷区GIGAスクールの大きな特徴です。
先進的な「学びの変革」事例
世田谷区には、Appleが教育分野で優れた取り組みを行う学校に与える「Apple Distinguished School(ADS)」の認定を受けた学校があります。
代表格が駒繋小学校です。ここでは、iPadが授業のあり方そのものを変えつつあります。
創造性と主体性を育む協働学習の具体例
駒繋小学校の教室を覗くと、子どもたちがiPadを「表現の道具」として使いこなしている姿が見えてきます。
3年生の国語では、学んだ内容を動画にまとめて発表。6年生の音楽では、GarageBandを使った作曲活動に取り組んでいます。
KeynoteやロイロノートSchoolを活用したプレゼンテーションも日常的に行われており、子どもたちは自分の考えを多様な方法で表現する力を身につけています。
「iPad活用」から「授業を変える」への道のり
ただし、端末を配布すれば自動的に授業が変わるわけではありません。
駒繋小学校が成果を上げている背景には、教員の意識改革への地道な取り組みがあります。
校内研究を重ね、教員全員がApple Teacher資格の取得に挑戦。
「教師が教える授業」から「子どもが学ぶ授業」への転換を、学校全体で模索してきました。
技術の導入と教員の成長、その両輪があって初めて、学びの変革は実現するのです。
保護者・生徒が抱える課題
「制限少なめ」の運用方針は、教育的な意図に基づいたものですが、課題がないわけではありません。
保護者からは「YouTubeばかり見ている」「ゲームに夢中になって勉強が手につかない」といった声が寄せられることも。
端末依存への懸念は根強いものがあります。
一方で生徒の側からは「思ったより制限が厳しい」という声も聞こえてきます。
立場によって、同じ運用方針でも受け止め方が大きく異なるのが現実です。
家庭で実践できる「自己管理」支援のヒント
学校での方針を理解した上で、家庭ではどうサポートすればよいのでしょうか。
効果的なのは、単純な時間制限よりも、行動と結びつけたルール作りです。
たとえば「宿題を終えたら端末を使ってOK」といった形で、やるべきことと端末利用をセットにする方法があります。
大切なのは、親が一方的にルールを押しつけるのではなく、子どもと一緒に話し合いながら決めていく姿勢です。
GIGAスクール第2期|更新計画と教育DXのロードマップ
GIGAスクール構想は、いよいよ第2期へと移行します。2025年9月には、A16チップを搭載した新型iPadへの更新が予定されています。文部科学省が示す最低スペック基準を満たし、今後数年間の安定運用を見据えた選定です。

端末更新後の学習環境と利活用推進策
新端末の導入により、学習環境は大きく進化します。処理性能の向上で、これまで動作が重かったアプリもスムーズに動くようになり、活用の幅が広がります。
また、学習eポータルやMEXCBT(文部科学省CBTシステム)の導入検討も進んでおり、学習データの活用による個別最適な学びの実現に向けた土台が整いつつあります。
教員の働き方改革を支えるICT統合支援
教育DXは、子どもの学びだけでなく、教員の働き方改革にも直結します。
世田谷区では統合型校務支援システムの導入を進めており、成績処理や出欠管理といった事務作業の効率化を図っています。
ヘルプデスクの窓口を一本化し、ICT支援員との連携も強化。教員がICTの「トラブル対応」に追われることなく、本来の「授業づくり」に集中できる環境を整備しています。
まとめ
世田谷区のGIGAスクールは、技術導入の先にある「学びの質」を見据えた取り組みです。
制限で管理するのではなく、子どもたちの主体性を育てる方針は、先進校の授業実践で着実に成果を上げています。
もちろん、家庭学習における課題や保護者の不安など、解決すべき点も残っています。
しかし、端末を「与える」段階から、学びを「変える」段階へきてい流のです。
世田谷区の挑戦は、全国のGIGAスクールにとって重要な示唆を与えてくれるはずです。
GIGAスクール環境での実現に向けた端末選定をサポート

GIGAスクール構想が進む中、多くの学校が直面する課題が端末の選定です。
Chromebook、iPad、Windowsタブレット──それぞれに異なる特性があり、学校の学習指導方針、教職員のICT対応力、予算配分などの要件により、最適な端末は変わります。
児童生徒の学習活動を最大限に支援する「教育的効果」、運用・管理の現実性を担保する「導入後の実務性」、学校経営を考慮した「コスト効率性」──これら複数の視点から、総合的に検討することが重要です。
田中電気は、各学校の教育理念、授業スタイル、運用体制を丁寧にヒアリングした上で、最も適切な端末選定から段階的な導入、運用サポートまで、学校のICT環境構築をワンストップで支援いたします。
端末選定でお悩みでしたら、ぜひご相談ください。
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