GIGAスクール構想の第2期が本格始動し、全国の教育委員会が端末更新の重要な局面を迎えています。
2025年度を中心に、約800万台もの端末が更新時期を迎える中、補助金の活用、OS選定、そして見落とされがちな古い端末の適切な処分まで、検討すべき課題は山積みです。
本記事では、文部科学省の最新方針から市場動向、実務上の注意点まで、端末更新に関する情報をお届けします。
予算担当者や教育関係者が今すぐ押さえておくべきポイントを解説していきます。

GIGAスクール構想の推進により、すべての児童生徒が学習用の端末を活用する環境が整備されました。
しかし、配備されたICT機器を効果的に活用するには、各学校に合わせた支援が必要です。
児童生徒の習熟度に応じた学習を実現する「きめ細かい学習指導」や、クラス全体の学びを深める「協調的な学習支援」など、多様な学習ニーズに対応できるプラットフォームが求められています。
田中電気は、これらの課題解決に必要な機能を一つに集約し、教育現場の実践的な運用をサポートすることで、児童生徒が自らの力で「主体的で創造的な学び」を実現できる環境づくりを支援します。
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GIGAスクール端末更新(第2期)の全体像とスケジュール
GIGA第2期の目的と第1期との違い(2024〜2028年度)
第2期GIGAスクール構想は、第1期で導入した端末の更新と、これまでに浮き彫りになった課題への対応が主な目的です。
第1期(2019〜2023年度)では、全国の小中学校に約1人1台の端末が配備されました。
しかし、端末の性能不足や通信環境の問題、教員の活用スキルのばらつきなど、様々な課題が明らかになりました。
第2期では、これらの反省を踏まえ、2024年度から2028年度までの5年間で計画的な端末更新を進めていきます。
単なる機器の入れ替えではなく、ネットワーク環境の抜本的な改善や校務DXの推進など、教育ICT基盤全体の発展を目指す包括的な取り組みとなっています。
特に重要なのは、第1期で導入された端末の多くが2024〜2025年度に耐用年数を迎えるため、この時期に更新作業が集中するという点です。
計画的な準備と予算確保が、各自治体にとって喫緊の課題となっています。
端末更新の補助金と予算基準(1台5.5万円)
国は端末更新に対し、1台あたり5.5万円を補助基準額として設定しています。
この金額は本体価格だけでなく、端末管理ソフト(MDM)や設定作業費用なども含めた総額として想定されています。
また、予備機の整備についても、配備台数の15%以内であれば補助対象となる点は見逃せません。
2025年度には全国で約400万台の端末更新が見込まれており、補助金申請が集中することが予想されます。
早期の計画策定と予算措置が求められる理由はここにあります。
実際、文部科学省が示したKPI(重要業績評価指標)でも、2025年度までに全自治体が更新計画を策定することが目標とされています。
補助金を最大限活用するためには、5.5万円という基準額の中で、必要なスペックと運用コストのバランスを取ることが重要です。
単純に最安値の端末を選ぶのではなく、長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮した選定が求められます。


端末調達の重要変更点
都道府県域全体での共同調達の仕組み
第2期では、都道府県域全体での共同調達が原則とされ、調達プロセスの効率化が図られています。
この方針転換には明確な理由があります。小規模自治体では端末調達のノウハウが不足し、事務負担が大きいという課題がありました。
また、単独調達では価格交渉力が弱く、コスト面でも不利になりがちでした。
共同調達には、事務負担の軽減、スケールメリットによるコスト削減、そして自治体間でのノウハウ共有という3つの大きなメリットがあります。
実際、文部科学省の調査では、約9割の自治体が共同調達に参加する意向を示しており、この仕組みが広く受け入れられていることがわかります。
ただし、共同調達に参加する場合でも、各自治体の教育方針や既存システムとの整合性を考慮する必要があります。
都道府県が主導する調達仕様書の策定段階から、積極的に意見を出していくことが重要です。
OSシェアの最新動向と選定理由の分析(表形式を挿入)
端末のOS選択は、導入後の運用効率を大きく左右する重要な判断です。 MM総研の市場調査によると、2024年度の端末調達におけるOSシェアは大きく変化しています。
| OS | シェア(2024年度) | 平均単価 | 主な選定理由 |
|---|---|---|---|
| ChromeOS | 約60% | 5.4万円 | 起動が速い、運用が容易、クラウド連携に強い |
| iPadOS | 約25% | 5.7万円 | 直感的な操作性、教育アプリの充実 |
| Windows | 約15% | 6.2万円 | 既存システムとの互換性、高度なソフト対応 |

ChromeOSのシェアが伸長している背景には、「運用のしやすさ」という実務上のメリットがあります。
教育委員会や学校現場からは、「起動が速い」「動作が安定している」「アップデートが自動で楽」といった声が多く聞かれます。
また、第1期でChromeOSを導入した自治体の多くが継続利用を選択していることも、シェア拡大の要因となっています。
一方、Windowsは従来型の校務システムとの親和性が高く、高度なソフトウェアが必要な高校などでは依然として選ばれています。
iPadOSは直感的な操作性から、特に小学校低学年での導入に適しているとされています。
重要なのは、自治体の教育方針や既存環境、そして運用体制に最適なOSを選ぶことです。
端末の「最低スペック基準」と堅牢性の重要性
文部科学省は、GIGA端末に求められる最低スペック基準を明確に定めています。 これは、全国どこでも一定水準以上の教育環境を保証するための重要な指針です。
主な最低スペック基準は以下の通りです:
- CPU性能: 快適な動作を保証する十分な処理能力
- メモリ: 複数のアプリを同時使用できる容量(4GB以上推奨)
- ストレージ: 学習データや教材を保存できる容量
- 重量: 1.5kg程度を超えないこと(持ち運びへの配慮)
- バッテリー駆動時間: 一日の授業をカバーできる時間
特に注目すべきは「重量1.5kg程度」という基準です。
練馬区での保護者調査では、端末とタブレットケースを合わせた重量に対する懸念の声が多く上がりました。
児童生徒が毎日持ち運ぶことを考えると、軽量化は重要な検討事項です。
しかし、ここに大きなジレンマがあります。軽量化を追求すると堅牢性が犠牲になり、破損リスクが高まります。
逆に堅牢性を重視すると重くなり、持ち運びの負担が増えます。この課題への現実的な対応策として、予備機を15%程度確保しておくことが推奨されています。

古い端末の「処分」とデータ消去
適切な端末処分が求められる背景と法規
端末更新で見落とされがちなのが、古い端末の適切な処分とデータ消去です。
第1期で導入された約800万台の端末には、児童生徒の個人情報や学習履歴など、機密性の高いデータが保存されています。
これらが適切に消去されないまま処分されれば、深刻な情報漏えい事故につながりかねません。
法的な観点からも、小型家電リサイクル法に基づく適切な処分が求められます。
文部科学省は、各自治体に対してリサイクル計画の策定と公表を義務付けました。単に廃棄するのではなく、環境負荷を考慮した計画的なリサイクルが必要なのです。
実際、一部の自治体では、データ消去の重要性への認識不足から、不適切な処分方法を選択してしまうケースが報告されています。
「端末を物理的に破壊すれば安全」という誤解も根強く残っています。しかし、物理破壊では完全なデータ消去は保証されず、専門業者による復元リスクも否定できません。
NIST基準に基づく「確実なデータ消去」とは
情報セキュリティの国際基準であるNIST(米国標準技術研究所)は、データ消去レベルを3段階に分類しています。 GIGA端末のような機密情報を含むデバイスには、最も厳格な「Purge(除去)」レベルの消去が必要とされます。
データ消去の3つのレベル
- Clear(消去): 通常の初期化・フォーマット → 復元リスクあり
- Purge(除去): 専用ソフトによる完全上書き → 復元ほぼ不可能
- Destroy(破壊): 物理的破壊 → 環境負荷大、コスト高
最も推奨される方法は、信頼できるソフトウェアによるPurgeレベルの消去です。
この方法なら、消去証明書を自動で取得でき、後の監査や報告にも対応できます。また、物理破壊と比較してコストも抑えられ、環境にも優しいというメリットがあります。
ここで注意すべきは、約35%の自治体が端末調達時にデータ消去もセットで委託しているという実態です。
一見効率的に見えますが、消去作業が適切に行われたか確認できないリスクがあります。データプライバシー保護の観点から、消去プロセスの透明性と証明書取得は必須要件と考えるべきです。
GIGA第2期で加速する教育DXと環境整備
次世代の校務デジタル化の推進
第2期GIGAスクール構想では、児童生徒向けの端末更新だけでなく、校務DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要な柱となっています。
これまで多くの学校では、校務系ネットワーク(成績管理など)と学習系ネットワーク(授業利用)が完全に分離されていました。この二重管理が、教職員の大きな負担となっていたのです。
次世代型校務支援システムへの移行により、クラウドベースでの統合管理が可能になります。
教員は一つのシステムで出席管理、成績処理、学習データの分析などを行えるようになり、業務効率が大幅に向上します。
文部科学省の調査では、校務DXにより教員の業務時間が週あたり5〜10時間削減できるとの試算もあります。
ただし、システム統合には慎重な計画が必要です。既存の校務支援システムとの連携、教職員への研修、そしてセキュリティ対策の強化など、検討すべき課題は多岐にわたります。

ICT支援員の配置拡充も、スムーズな移行のために重要な要素です。
ネットワーク環境の改善
快適な端末利用を実現するには、ネットワーク環境の整備が不可欠です。
文部科学省は、2025年度までに全ての学校で必要なネットワーク速度を確保することをKPI目標(達成率100%)として設定しています。
具体的には、児童生徒が同時にインターネットを使用しても快適に動作する通信速度が求められます。
第1期では、多くの学校で「動画が途中で止まる」「クラウドサービスの読み込みが遅い」といった問題が報告されました。これらは学習効果を著しく低下させる要因となっていました。
ネットワークアセスメント(評価)では、以下の項目を確認します:
- 現在の通信速度と安定性
- 同時接続台数への対応能力
- Wi-Fiアクセスポイントの配置状況
- セキュリティ対策の妥当性
アセスメントの結果、速度不足が判明した学校には、回線増強やアクセスポイント増設などの対策が必要です。
GIGAスクール構想では、こうしたネットワーク改善にも補助制度が用意されています。端末更新と合わせて、通信環境の総合的な見直しを行うことが推奨されます。

端末の利活用計画と教育効果について
端末を導入しただけでは、教育効果は得られません。
文部科学省は、端末の日常的な活用を促進するため、明確なKPI目標を設定しています。
具体的には、週3回以上端末を活用する授業の実施率や、個別最適・協働的な学びを実現している学校の割合などが評価指標となっています。
効果的な利活用のためには、教員のICTスキル向上が欠かせません。
単に機器の操作方法を学ぶだけでなく、端末を使ってどのように学びを深めるか、という教育手法の研修が重要です。
優良事例の共有や、教員間での実践交流も有効な手段です。
また、家庭への端末持ち帰りも、学びの保障という観点から推進されています。
不登校児童生徒のオンライン学習支援や、災害時の学習継続など、端末は「いつでも、どこでも学べる」環境を実現するツールとして期待されています。
各自治体には、セキュリティと利便性のバランスを取った持ち帰りルールの策定が求められます。
まとめ
GIGAスクール端末の第2期更新は、単なる機器の入れ替えではありません。
補助金5.5万円の枠内での最適なOS選択、共同調達による効率化、そして見落とされがちな古い端末の適切な処分まで、総合的な視点での計画が必要です。
特に重要なのは、NIST Purgeレベルでのデータ消去による情報漏えい対策、校務DXとネットワーク環境の整備、そして端末の日常的活用を実現する利活用計画の3点です。
これらを着実に実行することで、子どもたちの学びを支える強固なICT基盤が構築できます。
児童生徒の未来への投資として、最善の選択をするために、本記事の情報を活用してください。




