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個別最適な学びとは?協働的学びとの関係と求められる理由について解説

個別最適な学び

近年、社会の変化が加速するなかで、一人ひとりの興味・関心や学習状況に合わせて柔軟に指導を行う「個別最適な学び」が注目を集めています。

AIやデジタル技術の普及、グローバル化、そして予測が難しい時代に突入したことにより、子どもたちが自ら学びを選び取り、将来にわたって必要な力を身につけることが求められています。

本記事では、この「個別最適な学び」の概要から、実践のメリットや具体的な進め方など、教育関係者の方が知っておきたいポイントを整理して紹介します。

参考:学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料

目次

個別最適な学びとは

「個別最適な学び」は、大きく分けて次の2つの要素から成り立ちます。

指導の個別化

子ども一人ひとりの習熟度や理解度に合わせて、授業内容や教材、学習時間などを調整する指導法です。

理解の早い子には発展的な課題を、つまずきのある子には補充的な指導を行うことで、全員が無理なく基礎知識を身につけられるようにします。

学習の個性化

子どもの興味・関心、キャリア形成の方向性などに応じて、探究や研究テーマを選び、自分らしい学びを深める方法です。

例えば、総合的な学習の時間などで、子ども自身が設定したテーマを調べて発表する学習形態が該当します。

この2つを組み合わせることで、個々の学力・理解度をサポートしながら、一人ひとりの得意を伸ばす学び方を実現できるのが「個別最適な学び」の魅力です。

協働的な学びとの関係

「個別最適な学び」が注目を集める一方で、同時に重視されるのが「協働的な学び」です。

子どもが自分のペースで学習できる環境は魅力的ですが、個別ばかりに特化するとクラスメイトとのコミュニケーションや相互刺激が不足し、学びの幅が狭くなる可能性もあります。


そこで、個別最適な学びでは孤立した学習に陥らないように他者との連携を組み合わせることが不可欠です。

個別学習+グループワーク

たとえば、事前にタブレットやオンライン教材を使って各自が基礎内容を理解・演習し、後のグループワークでお互いの発見や疑問を共有し合う方法です。

わからない点を仲間同士で教え合い、深い気づきを得ることで、学びの質を高められます。

ローテーションモデル

個別学習と協働学習をサイクル化する「ステーション・ローテーションモデル」なども、子どもの集中力とコミュニケーション力を同時に育む実践例として知られています。

こうした工夫によって、個別での学びをさらに発展させるアイデアを得たり、学びを他者とともに形にしていくプロセスを経験できるようになります。

なぜ今「個別最適な学び」が求められるのか

予測困難な未来への備え

社会や産業構造の変化がかつてないスピードで進む中、子どもたちが将来にわたって学び続ける力を備えることは急務です。

学校教育の場で、画一的な一斉授業だけでは拾いきれない才能や適性を伸ばすためにも、一人ひとりに合わせた学びの仕組みが欠かせません。

多様性への対応

グローバル化が進むとともに、教室の中にも様々なバックグラウンドを持つ子どもが在籍するようになりました。

特別なサポートが必要な子や、言語面で配慮が必要な子も含め、すべての子どもに学びの機会を平等に提供するためにも「個別最適な学び」の視点は有効です。

社会や保護者からの期待

「子どもの興味や得意を伸ばしてほしい」「学習の遅れを素早くフォローしてほしい」など、保護者をはじめ社会全体からの要望も増えています。

実際、GIGAスクール構想などの政策が追い風となり、学習データの活用やタブレット端末の配備を通じて個別最適な学びを推進しやすい環境が整いつつあります。

取り組みのポイント

ICTを活用した学習支援

  • AIドリル・オンライン教材の活用
  • スタディログやポートフォリオの活用

一人ひとりの習熟度に応じて問題を自動出題するAIドリルや、解説動画を視聴できるオンライン教材を使うと、効率的に指導の個別化が図れます。

子どもの進捗状況をリアルタイムで把握しやすいため、習熟の遅れやつまずきを早い段階で発見できます。


また、学習履歴を可視化し、どの子がどの単元で苦手意識を持っているかをデータとして蓄積します。

ポートフォリオ形式で学習成果を記録すれば、子どもが自ら「どこを伸ばしたいのか」「何が得意なのか」を振り返る機会にもつながります。

授業デザインの工夫

  • 自由進度学習(小学校算数など)
  • 探究型学習(中学・高校の総合的な学習の時間など)

基本的な問題を解けた子は発展問題へ、まだ理解が不十分な子はやり直し問題へと進むなど、学習の進み具合に合わせて進度を変えられる仕組みをつくると、全員が自分のペースで確実に力をつけやすくなります。

それぞれの興味に基づいてテーマを設定し、調べ学習やフィールドワークを行う探究型学習は、学習の個性化の好例です。

結果をグループで共有することで協働的な学びにも発展させやすく、個々の学びをクラス全体で深めることが可能です。

一人ひとりへのフィードバック

  • 個別面談やオンライン相談
  • 振り返りシートやメタ認知の育成

ICT端末上の学習履歴を見ながら、教師と子どもが定期的に面談し、学習計画を一緒に考える方法が効果的です。

学校外でもオンラインで質問ができる仕組みを取り入れると、子どものモチベーションを継続させるうえで役立ちます。

「今日はどんな学びができたか」「次はどの部分を頑張るか」を書き出す習慣を身につけると、子ども自身が学びを自己調整しやすくなります。

こうした振り返りを重ねることが主体的な学習への第一歩です。

具体的な効果とメリット

学習意欲・学力の向上

習熟度や興味に合った教材・課題に取り組むため、子どもたちは「自分にもできる」「もっと知りたい」という実感を得やすくなります。

結果として、学習に前向きに取り組む子が増え、学力の底上げや飛躍的な伸びが期待できます。

自己調整力・問題解決力の育成

自分で学習内容や進度を決める経験を重ねることで、子どもは「何をどのように学べばいいか」を考えるようになります。

これが将来的な問題解決力や主体性につながり、社会に出てからも学び続ける力を育むことができます。

多様性を活かしたクラスづくり

一人ひとりの特性を認め合いながら学ぶため、教室が「それぞれが違って当たり前」という雰囲気に近づきます。

特別なサポートを必要とする子が取り残されることなく、協働的な学びのなかで得意分野を活かして参加しやすくなるのも大きなメリットです。

導入時に直面する課題

教師の負担増・指導体制

一人ひとりの学習進度や課題を把握しながら柔軟に授業を組み立てる必要があるため、教師の負担が増すことが懸念されます。

個別最適な学びを実践するうえでのポイントは、チームで指導にあたる体制づくりや、ICTの活用による業務効率化などを進めることです。

校内研修や他校との連携を通じてノウハウを共有し、教師が孤立せず取り組める仕組みを整えることも重要といえます。

ICT環境の整備と格差

GIGAスクール構想によって端末が配備された学校が増えていますが、ネットワーク環境やサーバーの負荷対策などインフラ面で課題が残るケースもあります。

タブレットの使い方に慣れていない子どもに対しての支援や、家庭でのインターネット環境の有無による格差など、学習環境の違いをどう補うかも検討が必要です。

評価・進路指導への反映

個別最適な学びを実践するほど、従来の一律評価だけでは子どもの成長を十分に捉えきれなくなります。

ルーブリック評価ポートフォリオ評価を導入し、子どもの多面的な力を把握する工夫が必要です。

中学校や高校では進路指導の観点からも、一人ひとりの学習履歴や成果を丁寧に蓄積し、指導計画に活かすことが求められます。

小・中・高それぞれのアプローチ

小学校

基礎学力の定着+個別支援
算数や国語などの基礎科目で自由進度学習を取り入れたり、タブレットのドリルで練習するといった方法が一般的です。

学年をまたいだ発展課題にも取り組みやすくなり、つまずきの早期解消につながります。

中学校

自己調整力を養う機会づくり
思春期の特性を踏まえ、ICTを活用した授業や協働的な探究学習で、子どもが主体的にテーマを選ぶ仕組みを取り入れると効果的です。

習熟度別課題と探究課題を組み合わせることで、多様なニーズに応えやすくなります。

高校

キャリア教育と探究活動の連動
総合的な探究の時間や選択科目の増加により、子どもが将来像に結びつけて学習計画を立てやすくなっています。

個々の得意分野・興味を最大限に活かせるよう、ポートフォリオの作成や成果発表の場を充実させると、生徒の自己肯定感や進路意識を高められます。

まとめ

「個別最適な学び」は、子どもの多様な特性や学習ニーズに合わせた指導を行うと同時に、協働的な学びを通じて新たな気づきや創造的なアイデアを生み出す教育の在り方です。

ICTの進展や社会の急速な変化を背景に、こうした学びを支える取り組みが進んでおり、教育現場ではこれまで以上に柔軟な授業デザインや評価方法が求められています。

一人ひとりの可能性を開花させるためにも、教師自身が孤立しない支援体制やICT環境の整備が不可欠です。

子どもが自ら学び方を選びとり、自分の得意を伸ばしながら仲間と学び合う教室づくりを目指して、ぜひ「個別最適な学び」の実践を検討してみてください。

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