GIGAスクール構想で導入された1人1台端末。
毎年度末になると、卒業生からの端末回収や新入生への再配布といった「年次更新」作業が発生します。
結論から言えば、年次更新は事前準備の質がすべてを左右します。
本記事では、文部科学省推奨のタスクリストを軸に、アカウント管理から端末初期化、データ移行、そしてMDMを活用した効率化ノウハウまでを網羅的に解説します。
はじめて年次更新を担当する方も、この記事を読めば全体像をつかめるはずです。
学校タブレット(GIGA端末)の年次更新とは?

年次更新の対象となる端末と作業範囲
年次更新とは、年度の切り替わりに合わせて端末やアカウントを整理し直す作業のことです。
具体的には、以下のような作業が対象となります。
- 卒業生が使用していた端末の回収・初期化
- 新入生への端末配布・アカウント設定
- 進級に伴うクラス変更・担任変更の反映
- 転入・転出児童生徒のアカウント処理
- 教職員の異動に伴うアカウント・端末の引き継ぎ
- 予備機の在庫確認と故障端末の入れ替え
このように、年次更新は単なる「端末の入れ替え」ではありません。
アカウント管理、データの取り扱い、組織体制の見直しまで含む包括的な作業です。
漏れが生じると、新年度の授業開始に支障をきたすおそれがあります。
なぜ今、確実な年次更新が必要なのか(2025年問題)
GIGAスクール構想で一斉に導入された端末は、2020年度前後に整備されたものがほとんどです。
つまり、導入から4〜5年が経過し、バッテリーの劣化やOSサポートの終了が同時多発的に発生する「2025年問題」に直面しています。
端末の物理的な寿命が近づく中で、年次更新の精度がこれまで以上に問われています。
故障端末の把握が遅れれば、新年度に使える端末が足りなくなる事態も起こり得ます。
加えて、NEXT GIGAと呼ばれる次期端末の更新計画も始まっています。
新旧端末が混在する過渡期だからこそ、計画的な年次更新の仕組みづくりが急務です。
文部科学省推奨「年度更新タスクリスト」4つのポイント

文部科学省は、年次更新を円滑に進めるための指針として4つの重要観点を示しています。「アカウント」「端末」「データ」「組織体制」の4つです。それぞれのポイントを順に解説します。
1. アカウント(ID)の更新ルール
年次更新で最初に着手すべきはアカウント管理です。学校現場では、1人の児童生徒が複数のアカウントを持っていることが珍しくありません。Google Workspace、Microsoft 365、学習eポータルなど、サービスごとにIDが存在します。
卒業生のアカウントは、データ保全期間を考慮した上で停止・削除を行います。すぐに削除すると学習記録が消失するため、一定期間のアーカイブが推奨されます。
転入生には、既存の命名規則に沿った新規アカウントを速やかに発行します。進級する児童生徒については、クラス替えに伴うグループの再編成も忘れずに行いましょう。作業の順番とスケジュールを事前に決めておくことで、混乱を防ぐことができます。
2. 端末の初期化・再設定と旧端末の処分
卒業生から回収した端末は、個人データを完全に消去した上で初期化します。初期化の手順はOSごとに異なるため、事前にマニュアルを準備しておくことが重要です。
初期化後の端末は、新入生向けに必要なアプリやプロファイルを再設定して配布します。手作業で1台ずつ設定すると膨大な時間がかかるため、MDMツールの活用が現実的です。
旧端末を廃棄する場合は、個人情報漏洩を防ぐためにデータの完全消去が必須です。単なる初期化では復元可能なケースもあるため、専用ソフトによる上書き消去や物理破壊を検討しましょう。廃棄証明書の取得も忘れてはなりません。
3. 学習データの適切な取り扱い
年次更新にあたり、児童生徒の学習データをどう引き継ぐかは重要な論点です。
進級後も過去の学習成果物を参照できるようにすることで、学びの連続性が保たれます。
データ移行の方針は、教育委員会が統一ルールを策定するのが理想です。
「どのデータを何年間保存するか」「卒業時にデータを本人に返却するか」など、運用ルールを明確に定めましょう。
クラウド上にデータを保管している場合は、アカウント削除と同時にデータが消える可能性があります。
削除前にバックアップを取る手順を確立しておくことが欠かせません。
4. 学校と教育委員会の役割分担・体制整備
年次更新は、学校単独で完結する作業ではありません。
教育委員会と学校がそれぞれの役割を明確にし、連携して進めることが成功の鍵です。
| 担当 | 主な役割 | 具体的な作業例 |
| 教育委員会 | 全体方針の策定・通達、予算措置、業者選定 | タスクリストの配布、MDM設定の統括、廃棄業者の手配 |
| 校長・管理職 | 校内推進体制の構築、スケジュール管理 | 担当者の任命、進捗確認、教委への報告 |
| ICT担当教員 | 技術的作業の実施・マニュアル作成 | 端末初期化、アカウント処理、データバックアップ |
| 担任教員 | 児童生徒への案内・端末回収 | 返却チェックリストの実施、個人データの確認 |
このように役割分担を明文化し、共有しておくことで、作業の重複や抜け漏れを防ぐことができます。
作業負担を激減させる!年次更新の効率化ノウハウ
MDM(モバイルデバイス管理)の導入メリット
数百台の端末を手作業で初期化・再設定するのは、現実的ではありません。
1台あたり30分かかるとすれば、300台で150時間の作業量です。
限られた人員と時間の中で、これを年度末に完遂するのは至難の業でしょう。
MDM(モバイルデバイス管理)を活用すれば、こうした作業を大幅に効率化できます。
MDMとは、複数の端末を一元管理するためのシステムです。主なメリットを確認しましょう。
- 遠隔操作で端末を一括初期化できる
- アプリやプロファイルをまとめて配信できる
- VPPライセンスの自動回収・再配布が可能
- 端末の利用状況やバッテリー状態を一覧で把握できる
- 学年・クラスごとにグループ別のポリシーを設定できる
MDMの導入により、ICT担当教員の負担は劇的に軽減されます。
年次更新だけでなく、日常の端末運用にも効果を発揮するため、未導入の自治体は早期の検討をおすすめします。
OSごとの管理・連携ツールの違い
学校で使用される端末は、主にiPad、Chromebook、Windowsの3種類です。
それぞれ管理に使うツールが異なるため、自校の環境に合った運用を押さえておく必要があります。
iPadの場合は、Apple School Manager(ASM)が管理コンソールとなります。
端末の登録やVPPライセンスの管理、MDMとの連携設定はすべてASM上で行います。
Chromebookは、Google Workspace for Educationの管理コンソールで一元管理します。
端末のポリシー設定やアプリの配信、ユーザーのグループ管理まで、ブラウザ上で完結する手軽さが特徴です。
Windows端末は、Microsoft 365(Intune)を活用した管理が一般的です。
Active DirectoryやAzure ADとの連携により、ユーザー認証からアプリ配信まで統合的に管理できます。
他自治体の成功事例から学ぶ進行のコツ
全国の自治体では、年次更新を効率化するためにさまざまな工夫が行われています。
他の自治体の成功事例を参考にすることで、自校の運用改善に活かせるヒントが見つかるはずです。
相模原市では、アカウントの命名規則を統一したことで、転入・転出時のID管理がスムーズになりました。
「学校コード+入学年度+出席番号」のように、どの学校でも共通のルールを設けることが混乱防止の鍵です。
新潟市では、教育委員会から各学校への事務連絡を徹底し、作業手順書を早い段階で配布しました。
「いつまでに何を完了すべきか」が明確になったことで、各校の作業が計画的に進んだと報告されています。
つくば市では、端末回収やデータ消去の手順を動画マニュアルとして作成しました。
文書だけでは伝わりにくい操作手順も、動画であれば誰でも迷わず作業できます。ICTが得意でない教員への配慮として、非常に有効な取り組みです。
端末買い替え(NEXT GIGA)に向けたポイント
最新の端末更新補助金制度の活用
端末の買い替えには当然ながら費用がかかります。
文部科学省は、GIGA端末の更新を支援するための補助金制度を設けています。
補助金額は1台あたり5.5万円が上限とされており、予備機は全体の15%以内が対象です。
自治体の負担を軽減する制度ですが、申請には要件があるため、早めの情報収集と予算確保が重要です。
補助金を活用するためには、端末の現状把握(台数、故障率、バッテリー状態など)を行い、更新計画を策定することが前提となります。
年次更新のタイミングでこうしたデータを収集しておくと、スムーズに移行計画を立てられます。
民間事業者のサポート活用
端末のキッティング(初期設定)や旧端末の適切な処分は、専門的なノウハウを必要とする作業です。
教員だけで対応するには限界があります。
民間のICT支援事業者にアウトソースすることで、教職員は本来の業務である教育活動に集中できます。
キッティング代行、データ消去証明の発行、廃棄処理の一括委託など、事業者が提供するサービスは多岐にわたります。
費用はかかりますが、教員の時間外労働の削減や、セキュリティ事故のリスク低減といった効果を考えれば、費用対効果は十分に見合うでしょう。
まとめ
年次更新は、事前準備が命です。「11月頃に計画策定、2月に端末回収、3月にデータ消去・初期化」といったスケジュール目安を立て、早め早めに動くことが成功の秘訣です。
文科省のタスクリストを活用し、アカウント・端末・データ・体制の4つの観点を漏れなくカバーしましょう。
MDMや外部事業者のサポートも積極的に活用し、教職員の負担を軽減しながら確実な年次更新を実現してください。

GIGAスクール構想の推進により、すべての児童生徒が学習用の端末を活用する環境が整備されました。
しかし、配備されたICT機器を効果的に活用するには、各学校に合わせた支援が必要です。
児童生徒の習熟度に応じた学習を実現する「きめ細かい学習指導」や、クラス全体の学びを深める「協調的な学習支援」など、多様な学習ニーズに対応できるプラットフォームが求められています。
田中電気は、これらの課題解決に必要な機能を一つに集約し、教育現場の実践的な運用をサポートすることで、児童生徒が自らの力で「主体的で創造的な学び」を実現できる環境づくりを支援します。
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