ICT教育は、正しく活用すれば学力向上に効果があります。文部科学省の調査では、端末を積極的に使う学校ほど学力テストの正答率が高い傾向が報告されています。一方で、OECD(経済協力開発機構)のPISA調査では、端末の使いすぎが読解力の低下につながるという結果も出ました。つまり「使い方」が成果を左右するのです。本記事では、最新のデータをもとにICT教育と学力の関係を整理し、学校現場で成果を出すための実践ポイントを解説します。
ICT教育とは?基本の仕組みと目的
ICT教育とは、パソコンやタブレットなどの情報通信技術を授業に取り入れる教育手法です。
従来の黒板とノートだけの学びに、デジタルの力を加えることで学習の幅を広げます。
ICT教育の定義と主な特徴
ICTは「Information and Communication Technology」の略です。
日本語では「情報通信技術」と訳されます。
教育分野では、タブレット端末や電子黒板、学習アプリなどを活用して授業を行うことを指します。
ICT教育の主な特徴は次のとおりです。
- 個別最適な学びの実現
- 協働的な学びの促進
- 即時フィードバック
- 多様な教材へのアクセス
従来の一斉授業では、理解度に差があっても全員が同じペースで進んでいました。
ICT教育では、一人ひとりの理解度に合わせた教材を提供できます。
わからない問題はその場で解説を確認でき、つまずきを放置しません。
GIGAスクール構想の概要と進捗
GIGAスクール構想は、2019年に文部科学省が打ち出した教育改革です。
「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字を取っています。
すべての児童生徒に1人1台の学習用端末と、高速通信ネットワークを整備する計画です。
整備状況の変化を以下の表にまとめます。
| 項目 | 2019年(構想前) | 2024年(現在) |
| 端末台数 | 児童生徒6.1人に1台 | 児童生徒1人に1.1台 |
| 無線LAN整備率 | 43.4% | 94.8% |
| デジタル教科書 | 未導入 | 英語・算数で段階導入 |
わずか数年で環境整備は大きく前進しました。現在は端末を「どう使うか」が焦点になっています。
ICT教育は学力を上げるのか?データで検証

ICT教育と学力の関係は、一概に「上がる」「下がる」とは言えません。
複数の調査データを確認すると、使い方と使用時間で結果が大きく異なることがわかります。
学力向上を示すデータ
文部科学省の全国学力・学習状況調査では、ICT機器を活用した授業に取り組む学校ほど平均正答率が高い傾向が確認されています。
特に「主体的・対話的で深い学び」を実践している学校で顕著な成果が見られます。
効果が確認された主な領域は次のとおりです。
- 協働学習での意見交換
- 個別ドリルによる基礎学力の定着
- 動画教材を使った理解の深化
- プレゼンテーションによる表現力の向上
端末の活用が進んだ学校では、授業が「教師主導型」から「学習者主体型」へ変わったという報告もあります。
子どもたちが自分の意見を積極的に発表するようになり、学ぶ姿勢そのものが変化しています。
学力低下を示すデータ
一方で、OECDのPISA調査では注意すべきデータも報告されています。
学校でのコンピュータ使用時間が長くなるほど、読解力や数学のスコアが下がる傾向が見られました。
スウェーデンでは、デジタル化を急速に進めた結果、児童の読解力が低下しました。
この事態を受けて、同国は紙の教科書への回帰を決定しています。
これらのデータは「デジタルさえ入れれば成績が上がる」という考え方に警鐘を鳴らしています。
学力に差が出る「使い方」の違い
データを総合すると、学力を左右するのは「ICTを使うかどうか」ではなく「どう使うか」です。
学力への影響を使い方別にまとめます。
| 使い方 | 学力への影響 | 具体例 |
| 調べ学習・協働学習 | プラスの傾向 | テーマについてグループで調査・発表 |
| 個別ドリル・反復練習 | プラスの傾向 | AIドリルで苦手単元を重点的に復習 |
| 動画視聴のみ(受動的) | 効果が薄い | 授業中に動画を流して見るだけ |
| 長時間の自由使用 | マイナスの傾向 | 授業と関係ないサイトの閲覧 |
能動的に考え、アウトプットする使い方では成績が伸びる傾向があります。
受動的に眺めるだけの使い方では、効果は期待しにくいといえます。
ICT教育で学力が下がる3つの原因
ICTの導入が学力低下につながるケースには、共通した原因があります。
問題はICTそのものではなく、運用の仕方にあります。
「書く力」の低下
タブレットでの入力が増えると、手書きの機会が減ります。
手書きは脳の複数の領域を同時に刺激し、記憶の定着を助ける効果があります。
ノルウェーの研究では、手書きで学習した生徒のほうがキーボード入力の生徒より記憶テストの成績が良かったと報告されています。
端末に頼りすぎると、漢字を書く力や文章を構成する力が弱まるおそれがあります。
「考える力」の低下
検索すればすぐに答えが見つかる環境は便利です。
しかし、自分の頭で考えるプロセスが省略されがちになります。
調べ学習でも、検索結果をコピーして貼り付けるだけでは思考力は育ちません。
「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できる力が重要です。
集中力の分散と依存リスク
端末には学習以外のコンテンツも入っています。
授業中に関係のないサイトを閲覧する生徒がいるという報告は少なくありません。
通知やSNSによる注意の分散も問題です。
長時間の画面使用は、視力低下や睡眠の質の悪化にもつながります。
こうした生活習慣の乱れが間接的に学力へ影響する可能性があります。
学力を伸ばすICT活用5つのポイント
ICTを学力向上に結びつけるには、押さえるべきポイントがあります。
現場の実践事例から、効果的な活用法を5つにまとめました。
アナログとデジタルを使い分ける
端末での入力と手書きを場面に応じて使い分けることが大切です。
漢字練習や作文はノートに手書きで行い、調べ学習やプレゼン資料作成にはタブレットを使う。
このように目的に応じた使い分けが、それぞれの利点を引き出します。
使い分けの例を示します。
| 活動内容 | 推奨ツール | 理由 |
| 漢字・計算の反復練習 | 紙のノート | 手書きによる記憶定着 |
| 調べ学習 | タブレット | 情報収集の効率化 |
| 意見交換・発表 | 電子黒板+タブレット | 共有と可視化 |
| 作文の下書き | 紙のノート | 構成力の養成 |
| 作文の清書・編集 | タブレット | 推敲の効率化 |
個別最適な学習を実現する
AIドリルなどの学習アプリは、児童生徒一人ひとりの理解度を分析します。
苦手な単元を自動で検知し、その子に合った問題を出題してくれます。
教師が30人以上の学習進度を個別に把握するのは困難です。
ICTツールが個別最適化の支援役となり、教師の負担を減らしながら学習効果を高めます。
即時フィードバックを活かす
紙のテストでは、採点結果が返却されるまでに数日かかることがあります。
デジタル教材なら、回答した直後に正誤と解説が表示されます。
間違えた直後に正しい知識を確認できるため、記憶が定着しやすくなります。
教師はリアルタイムで学級全体の正答率を把握でき、つまずきの多い箇所を重点的に指導できます。
アクティブラーニングと組み合わせる
ICTは「主体的・対話的で深い学び」を実現する道具として力を発揮します。
たとえば、共有ドキュメントを使ってグループで意見を出し合い、一つの課題を解決する授業があります。
全員がリアルタイムで書き込めるため、発言が苦手な生徒も自分の考えを表現できます。
「自分の意見を持ち、伝える」経験が、思考力と表現力の両方を鍛えます。
利用ルールを明確にする
端末の使い方にルールを設けることは不可欠です。
授業中に学習と無関係なサイトを閲覧しないよう、フィルタリングを設定します。使用時間の上限を決め、目の休憩を促す仕組みも重要です。
効果的なルール設定の例を紹介します。
- 授業中は指定アプリのみ使用可能にする
- 30分ごとに画面から目を離す時間を設ける
- 家庭での使用時間を保護者と共有する
- 情報モラルの授業を定期的に実施する
ルールは「禁止」ではなく「良い使い方を習慣にする」という視点で設けましょう。
子どもたち自身がルールづくりに参加すると、主体的に守る意識が生まれます。
教員のICT指導力が学力を左右する
端末や通信環境がどれだけ整っても、使いこなす教員がいなければ効果は出ません。
教員のICT活用指導力は、児童生徒の学力に直結します。
教員研修の現状と課題
文部科学省の調査では、ICT活用指導力に「自信がある」と答えた教員は増加傾向にあります。
しかし、年代やスキルによって大きな差があるのが実情です。
多忙な業務の中で研修時間を確保すること自体が難しいという声もあります。
形だけの研修ではなく、実際の授業で使える内容にすることが求められています。
ICT支援員の役割と活用法
ICT支援員は、教員の授業準備や機器トラブル対応を支援する専門スタッフです。
支援員がいる学校では、教員が授業設計に集中できるため、ICT活用の質が高まります。
国はGIGAスクール運営支援センターの整備を進めており、広域での支援体制構築が進んでいます。
教員一人に負担を集中させず、チームで対応する体制づくりが重要です。
家庭でできるICT学習との付き合い方

学校だけでなく家庭での端末利用も学力に影響します。保護者が知っておきたいポイントを整理します。
家庭学習での端末活用のコツ
持ち帰り端末を家庭学習に活かすには、学習時間と内容を親子で決めることが大切です。
「何を」「どのくらい」使うかを明確にすると、ダラダラ使いを防げます。
学習アプリの進捗を保護者が確認できる仕組みも有効です。
学校の宿題や復習に端末を使う場合は、教科ごとに時間を区切ると集中力が持続します。
使いすぎを防ぐ家庭のルールづくり
家庭でのルールは親が一方的に押し付けるのではなく、子どもと話し合って決めましょう。
就寝前1時間は端末を使わない、食事中は端末をしまうなど、生活リズムを守るルールが効果的です。
家庭で設けたいルールの例は次のとおりです。
- 学習用途と娯楽用途の時間を分ける
- 就寝1時間前は端末を使わない
- リビングなど家族の目が届く場所で使う
- 週に1回は端末を使わない日をつくる
Wi-Fi環境の有無で学習機会に差が出ることも課題です。
自治体によっては、Wi-Fi環境がない家庭への貸出支援も行われています。困ったときは学校や教育委員会に相談してみましょう。
2025年以降のICT教育の展望
ICT教育は端末整備の段階を終え、「活用の質」を高める段階に入っています。今後注目される動きを整理します。
生成AIの教育活用と注意点
生成AIは、文章の添削や教材作成の効率化に活用され始めています。
教師の業務負担を減らす可能性がある一方、注意点もあります。
生成AIの回答は必ずしも正確ではありません。
児童生徒がAIの出力をうのみにすると、思考力の低下につながるおそれがあります。
「AIの答えを検証する力」を育てることが、新たな教育課題です。
CBT(コンピュータベーステスト)の導入
CBTとは、テストをコンピュータ上で実施する仕組みです。
文部科学省は「MEXCBT(メクビット)」というシステムを開発し、全国学力テストへの導入を進めています。
紙のテストに比べ、採点の迅速化や問題の多様化が期待されています。
動画や音声を使った出題など、従来では難しかった形式のテストも可能になります。
デジタル教科書の本格展開
2024年度から英語のデジタル教科書が導入され、算数・数学でも順次展開が予定されています。
音声再生や拡大表示、書き込み機能など、紙にはない機能が学習を支援します。
特に、外国語学習でのネイティブ音声の活用は高い効果が期待されています。
ただし、紙の教科書との併用が基本であり、完全な置き換えは想定されていません。
まとめ
ICT教育と学力の関係は「使い方次第」です。
データが示すように、能動的な活用は学力向上に寄与し、受動的な使用や過度な依存はマイナスに働きます。
本記事のポイントを振り返ります。
- ICT教育は正しく使えば学力向上に効果がある
- 使いすぎや受動的な利用は学力低下を招くリスクがある
- アナログとデジタルの使い分けが重要
- 教員の指導力と研修の充実が成果を左右する
- 家庭での利用ルールづくりも不可欠
- 生成AI・CBT・デジタル教科書が今後の注目トピック
大切なのは、ICTを「目的」ではなく「手段」として位置づけることです。
児童生徒が自ら考え、表現し、学び合う。その土台をICTが支えるとき、学力は確かに伸びていきます。
学校と家庭が連携し、子どもたちにとって最適な学びの環境を整えていきましょう。

GIGAスクール構想の推進により、すべての児童生徒が学習用の端末を活用する環境が整備されました。
しかし、配備されたICT機器を効果的に活用するには、各学校に合わせた支援が必要です。
児童生徒の習熟度に応じた学習を実現する「きめ細かい学習指導」や、クラス全体の学びを深める「協調的な学習支援」など、多様な学習ニーズに対応できるプラットフォームが求められています。
田中電気は、これらの課題解決に必要な機能を一つに集約し、教育現場の実践的な運用をサポートすることで、児童生徒が自らの力で「主体的で創造的な学び」を実現できる環境づくりを支援します。
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